ヨハネによる福音書について教えてください。
誰が書いたのですか?
どんな特徴がありますか?
今回はこんなリクエストにお答えします。
✔本記事の内容
- 誰が、いつ、どこで、誰のために書いたの?
- ヨハネによる福音書のあらすじ【アウトライン付き】
- ヨハネによる福音書からわたしたちは何を学べるのか?【特徴】
✔本記事の信頼性
- 筆者は、クリスチャン歴40年以上
- 約20年間の牧師としての経歴
- キリスト教の主な著作を読んで得た知識
この記事を読むと、ヨハネによる福音書についてざっくりと分かります。
カンタンに解説しますので、ぜひ、最後までご覧ください。
ヨハネによる福音書とは?
ヨハネによる福音書とは、新約聖書の最初にある4つの福音書の1つです。
福音書はイエス・キリストの言葉と行いを記した書であり、マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネによる福音書があります。
他の3つの福音書と同じく、ヨハネによる福音書はイエス・キリストが神の子、救い主であると証言しています。
ただ、違いもあるのです。
マタイ、マルコ、ルカによる福音書は、それぞれ違った視点からではあるものの、共通した出来事を多く記録しており、「共観(きょうかん)福音書」と呼ばれています。
一方、ヨハネによる福音書には他の3つの福音書にはない独自の多くの出来事が含まれているのです(共観福音書との共通記事が1割以下)。
エウセビオスの『教会史』に含まれているアレクサンドリアのクレメンスの証言によると、
「しかしヨハネは、(イエスについての)外面的な事実が他の福音書の中ですでに説明されていることを知っていたので、自分の弟子たちに促され、聖霊なる神に導かれたとき、最後に霊的な福音書を書いたのである。」(エウセビオス『教会史』)
クレメンスが霊的な福音書と表現した通り、ヨハネによる福音書はイエス・キリストが誰なのか、どんなことをしたのかについて、他の3つの福音書よりも霊的に深い見方をしています。
ただ、元々のギリシャ語も日本語の翻訳の文章もシンプルで、初心者の方にもイエス・キリストが神の子、救い主だということを分かりやすく伝えています。
ヨハネによる福音書だけを分冊にしてクリスチャンではない方々に配っているほどです。
同時に、その内容はどこまでも深く、何十年もクリスチャンとして歩んできた人たちにとっても、なお学ぶところがある、非常に魅力的な福音書なのです。
ヨハネによる福音書は、4つの福音書の中で最後に書かれた福音書だと一般的に考えられています。
ヨハネによる福音書を理解するためには、実際に読んでいただくのが一番ですが、ヨハネによる福音書の理解に役立つことを解説していきます。
誰が、いつ、どこで、誰のために書いたの?
ここではヨハネによる福音書の著者、執筆年代・場所、読者について説明しましょう。
著者
ヨハネによる福音書を書いたのは、イエス・キリストの12使徒の一人、ゼベダイの子ヨハネだと伝統的に考えられています。
ヨハネによる福音書自体にはヨハネが書いたとは記されておらず、「イエスが愛された弟子」が福音書を執筆したと証言されています(ヨハネによる福音書21:24)。
イエスが愛したこの弟子は、最後の晩餐の時、イエスの胸によりかかっていましたが(ヨハネによる福音書13:23, 25)、エイレナイオスの以下の証言によると、最後の晩餐のときに主イエス・キリストの胸によりかかったのは、ヨハネでした。
「主の胸によりかかった主の弟子ヨハネは、アジヤのエペソに滞在中に福音書を出版した。」
イエスの12使徒の一人であり、特に重要な弟子であったゼベダイの子ヨハネの名前がヨハネによる福音書の中に登場しないことからも、「イエスが愛された弟子」とはヨハネのことだと考えられているのです。
執筆年代
紀元85-90年代と考えられています。
①ヨハネによる福音書の執筆が2世紀以降ではない理由としては、2世紀前半のものとされるヨハネによる福音書の写本断片がエジプトで発見されていることがあげられます。
小アジヤのエペソからエジプトまで福音書が伝わり、パピルスに書き記されるまでの時間を考えると、紀元100年までには福音書が執筆されていなくてはなりません。
②ヨハネによる福音書の執筆があまり遅くないと考えられる理由は、ヨハネ自身の年齢です。
ヨハネは自分が著した福音書を誤解した人々へ、その後で「ヨハネの手紙」を書き送っています。
ゼベダイの子ヨハネは紀元30年頃にイエス・キリストの活動を目撃した人物ですから、彼の年齢を考えると、福音書執筆はあまり遅くないでしょう。
③エイレナイオスの証言によると、ヨハネは98年に開始したトラヤヌス帝の時までエペソに住んでいました。
以上の3点を考慮すると、ヨハネによる福音書の執筆年代は紀元85-90年代となるでしょう。
執筆場所
エイレナイオスをはじめ、古代の教父たち(キリスト教の教師たちのこと)によると、ヨハネによる福音書は小アジヤ(現代のトルコ)のエペソで執筆されました。
「主の胸によりかかった主の弟子ヨハネは、アジヤのエペソに滞在中に福音書を出版した。」(エイレナイオス)
執筆目的と読者
ヨハネによる福音書はローマ帝国の各地に離れ住んでいたユダヤ人やユダヤ教への改宗者たちへの伝道目的で執筆されたと考えられます。
①ヨハネによる福音書は伝道目的で執筆されました。
ヨハネによる福音書とヨハネの手紙を比較すると、福音書が伝道目的で書かれたことが分かります。
(ヨハネによる福音書20:31)
ヨハネの手紙は、すでに神の子イエスを信じている読者を励ます目的で書き送られているのに対して、福音書の方は読者がイエスを神の子キリストと信じる目的で執筆されています。
②ヨハネによる福音書にはユダヤ人の祭りや宗教儀式、旧約聖書に由来する用語などがたくさん出てくるため、読者は何らかの形でユダヤ人にルーツを持つか、ユダヤ教と関わりのある人々でしょう。
③しかし、この福音書に出てくるヘブライ語やアラム語は当時の共通言語であったギリシャ語に翻訳されているため、その頃ローマ帝国の各地に離れ住んでいたユダヤ人やユダヤ教への改宗者たちが読者だと考えられます。
④ただ、ヨハネによる福音書は、
- 神が世を愛されたこと(ヨハネによる福音書3:16)、
- ユダヤ人だけではなくギリシャ人もイエスに会いに来たこと
- イエスが世界中に散らばっている神の子たちを一つに集めるために十字架で死ぬこと
を記すことによって、イエスの救いは全人類を対象としていると伝えています。
ヨハネによる福音書のあらすじ【アウトライン付き】
ヨハネによる福音書のアウトライン
①1:1-18 プロローグーことばが人となったー
②1:19-12:50 しるしの書ー世に栄光を現す神の子ー
1:19-51 公的な活動の前奏曲ー洗礼者ヨハネと弟子たちの証言ー
2:1-4:54 初期の宣教
5:1-11:57 イエスのしるしと宣教
12:1-50 イエスの葬りの準備とエルサレム入城
③13:1-20:31 栄光の書ー十字架と復活において栄光をあらわす神の子ー
13:1-38 最後の晩餐
14:1-16:33 弟子たちへの別れのメッセージ
17:1-26 イエスのとりなしの祈り
18:1-19:42 イエスの受難と十字架の死
20:1-29 イエスの復活
20:30-31 本福音書執筆の目的
④21:1-25 エピローグ
21:1-23 ガリラヤで弟子たちに現れるイエス 21:1-23
21:24-25 結びのことば
ヨハネによる福音書のあらすじ
①1:1-18 プロローグーことばが人となったー
神の独り子である「ことば」が、父なる神の愛と救いの御心をあらわすために人(イエス・キリスト)となったことが語られています。
②1:19-12:50 しるしの書ー世に栄光を現す神の子ー
1:19-51 公的な活動の前奏曲ー洗礼者ヨハネと弟子たちの証言ー
救い主の先駆者である洗礼者ヨハネはイエスについて証言しました。
イエスと最初の弟子たちの出会い、そして弟子たちの証言も記されています。
2:1-4:54 初期の宣教
ヨハネによる福音書に書かれているイエスの7つの奇跡(「しるし」と呼ばれている)の2つが記されています。
ガリラヤのカナでの最初の奇跡(水をぶどう酒に変えた)と2番目の奇跡(役人の息子の癒し)の間に、イエスはエルサレム神殿をきよめ、ニコデモと対話し、ユダヤ人に軽蔑されていた混血のサマリヤ人女性とも対話しました。
5:1-11:57 イエスのしるしと宣教
ヨハネによる福音書に書かれているイエスの7つの奇跡(しるしと呼ばれている)の3-7番目の奇跡が記されています。
- 38年間病気だった人の癒し
- 5000人を5つのパンと2匹の魚を奇跡的に増やして養う
- ガリラヤ湖の上を歩く
- 生まれつき目の不自由な人の癒し
- ラザロの復活
イエスの行った奇跡がユダヤ人との論争を引き起こし、ユダヤ人のイエスへの敵意が高まっていきます。
7つの奇跡のクライマックスとして、イエスがラザロをよみがえらせると、ユダヤ人の指導者たちはイエス殺害を計画しました。
イエスの7つの奇跡とその意味について知りたい方は、ぜひ、この記事もご覧ください↓↓
12:1-50 イエスの葬りの準備とエルサレム入城
マリヤがイエスに油を注いでイエスの葬りの準備をしました。
イエスはエルサレムに入り、イエスの最後の1週間が始まります。
③13:1-20:31 栄光の書ー十字架と復活において栄光をあらわす神の子ー
13:1-38 最後の晩餐
イエスは弟子たちの足を洗い、イスカリオテのユダの裏切りを予告し、弟子たちがお互いに愛し合うべきことを教えました。
14:1-16:33 弟子たちへの別れのメッセージ
イエスは弟子たちに別れのメッセージを語りました。
特に重要なのは、イエスが天に昇った後に送られてくる助け主、聖霊についての教えです。
17:1-26 イエスのとりなしの祈り
イエスはその時そばにいた弟子たちのため、弟子たちを通してイエスを信じることになる将来の弟子たちのために、神に祈りをささげました。
18:1-19:42 イエスの受難と十字架の死
イエスの受難を流れで示します。
イスカリオテのユダの裏切りによってイエスが捕まる
↓
大祭司によるイエスの尋問
↓
使徒ペテロがイエスとの関わりを否定
↓
ローマ総督ポンティオ・ピラトによる取り調べと裁判
↓
イエスが十字架につけられるが、そのことによって罪からの救いを成し遂げる
↓
イエスの埋葬
20:1-29 イエスの復活
3日目にイエスが復活し、マグダラのマリヤと再会します。
イエスは部屋に閉じこもっていた他の弟子たちの前にも現れました。
その場にいなかったトマスはイエスが復活したことを信じませんでしたが、直接イエスと会って、イエスが本当に復活したことを信じました。
20:30-31 本福音書執筆の目的
この福音書の執筆の目的は、読者がイエスを神の子キリストと信じて永遠の命を得ることだと語られます。
④21:1-25 エピローグ
21:1-23 ガリラヤで弟子たちに現れるイエス
イエスは復活した後、ペテロをはじめとする弟子たちの前に姿を現し、ペテロの罪を赦し、ペテロに信者の世話をするように言いました。
21:24-25 結びのことば
福音書の著者はイエスの愛した弟子であることが、他の弟子たちによって証言されています。
イエスの偉大さを語って、福音書は終わっています。
ヨハネによる福音書からわたしたちは何を学べるのか?【特徴】
三位一体(さんみいったい)
キリスト教はイスラム教やユダヤ教と同じく、ただ一人の神を信じる唯一神教です。
しかし、イスラム教やユダヤ教と決定的に違うのは、唯一の神には父と子(イエス・キリスト)と聖霊の3つの位格(いかく)があると信じている点です。
これを「三位一体(さんみいったい)」と言います。
新約聖書全体が三位一体の父と子と聖霊について教えていますが、特にヨハネによる福音書が三位一体の神について重要な教えを伝えているのです。
たとえば、
- 父と子はこの世界を創造する前から永遠に愛し合っていること
→神は孤高の絶対者ではなく、愛の神です。 - 神は罪へと堕落したわたしたち人間をそれでも愛し、わたしたちが永遠の命を得られるように、神の子イエス・キリストをこの世に送り、十字架で犠牲としてくださったこと
→三位一体の神はわたしたちを罪から救うために総力をあげて働いてくださいます。
ヨハネの福音書のおかげで、わたしたちは三位一体の神についての最も大切で、私たちの心を喜びと感謝と希望に満たす教えを知ることができるのです。
イエス・キリストは神の子
イエスが神の子であることも新約聖書全体の教えです。
しかし、特にヨハネによる福音書がイエス・キリストは神の独り子であることを強調しています。
イエスは単なる人間ではなく、天地創造前から永遠に父なる神と共に存在した神の独り子です。
聖霊
聖霊も新約聖書全体に出てきます。
しかし、ヨハネによる福音書では、イエス自身が弟子たちに聖霊について詳しく語っています。
新約聖書で最も深い聖霊の教えはヨハネによる福音書の中にあるのです。
たとえば、ヨハネによる福音書を読むことによって、わたしたちは聖霊が真理の御霊であると知ることができます。
神の愛
ヨハネによる福音書、特に聖書全体の教えの要約と言える3章16節は、神が御子イエスをこの世に送り、十字架で犠牲とするほどに私たちを愛してくださっていることをはっきりと伝えています。
神はそのひとり子を賜わったほどに、この世を愛して下さった。それは御子を信じる者がひとりも滅びないで、永遠の命を得るためである。(ヨハネによる福音書3:16)
新約聖書の中でも、神が愛であることを最も鮮やかに教えているのがヨハネによる福音書なのです。
永遠の命
聖書の教える永遠の命は、不老不死ではありません。
今の人生の単なる延長ではなく、質の変化です。
ヨハネによる福音書を読むことによって、永遠の命とは永遠に生きている神とイエスを知り、共に生きることだと、私たちは知ることができるのです。
新しい戒め
ヨハネによる福音書はクリスチャンの兄弟愛を教えています。
イエスは自分の弟子であるクリスチャンたちに新しい戒めを与えました。
神の子イエスが自分たちを愛して十字架で命を捨ててくれたように、クリスチャンたちは互いに愛し合うべきという掟です。
わたしは、新しいいましめをあなたがたに与える、互に愛し合いなさい。わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互に愛し合いなさい。
互に愛し合うならば、それによって、あなたがたがわたしの弟子であることを、すべての者が認めるであろう」。 (ヨハネによる福音書13:34-35)
まとめ:神の愛を伝えるヨハネによる福音書を読んでみましょう!
Richard Mortel, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons
最後までお読みいただき、ありがとうございました。いかがでしたか。
この記事ではヨハネによる福音書について、
- 誰が、いつ、どこで、誰のために書いたの?
- ヨハネによる福音書のあらすじ【アウトライン付き】
- ヨハネによる福音書からわたしたちは何を学べるのか?【特徴】
を解説してきました。
ヨハネによる福音書についておおまかにお分かりいただけたことでしょう。
ヨハネによる福音書は、
- イエス・キリストの12使徒の一人、ゼベダイの子ヨハネによって、
- 紀元85~90年代の小アジヤのエペソで、ローマ帝国中に離散するユダヤ人とユダヤ教への改宗者たちに伝道する目的で執筆されました。
- この福音書は、三位一体やイエスが神の子であること、聖霊、神の愛、永遠の命、新しい戒めなど、キリスト教にとって大切な教えや倫理を教えています。
ぜひ、次はヨハネによる福音書を実際に読んでみてください。
イエス・キリストが神の子であることや神が愛であることなど、キリスト教の最も大切な教えについて一番良く分かります。
あなたがヨハネによる福音書を通して神の子、救い主イエスと出会い、イエスを信じ手永遠の命を得ることを心から願っています。
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